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遺品 回収が大々的に変わるのは今回が初めて?

最近杉の植林は著しくすすんで来て天竜川、大井川をはじめ四国の那賀川、物部川の流域にもこれに近い風景を見るようになったが、村里に遠いところはまだ雑木林が残っている写真からはスギの樹齢まではわからないが、おそらく戦後になって植林されたものだ。
Mは、酒造用の樽や桶をつくるためにスギを植林していったと書いているが、果たしてそれだけだろうか。 同書の「S」の中で、関東北部から東北南部へかけての山々は実に青々としている。
それが、平地の黄色とくっきりと対照をなしている。 この青緑色の多くは杉の植林である。
昭和20年以前は雑木林だった山であると書いているように、戦後、植林されたもののような気がする。 かつてぼくらは、木といえば、太い幹から空に向かって枝分かれしている広葉樹を描いダムが造られることになったのが1952年(昭和27年)というから、そのときに植えられたとしたら樹齢30年になる。
ぼくは小さい頃、父に連れられて何度か十津川で遊んだことがある。 遊ぶといっても山を駆け回るだけだ。
父は猟が好きで、十津川に仲間でもいたのだろう。 昭和30年代前半のはるか昔のことだから、うっすらとした記憶しかないが、こんなにスギ林が広がっていたという印象はない。
ところが、最近の子供たちは、三角形を重ねたような木しか描かないという。 おそらくスギかヒノキなのだろう。

もちろん子供だけではない。 若い世代の大人たちもそうだ。
これは、木といえばスギを思い浮かべるほど、日本の山々はスギに覆われてしまったからだ。 スギは建築材でも非常に加工しやすい有用材だ。
広葉樹だとそうはいかない。 だから、古代から建築物に使われてきたし、江戸時代には各藩の資源として積極的に植林された。
しかし、日本の国土が、見渡すかぎりスギの山になったのは戦後のことである。 日本の国士は17・4%が森林という、世界でもトップクラスの森林国だが、このうち、スギ、ヒノキ、アカマツといった、人間の手で植林された人工林は、実に3%の1036万ヘクタールにもおよぶ。
さらに、この人工林の約17%にあたる452万ヘクタールにスギが植えられているのだ。 ヒノキを含めると、なんと709万ヘクタールと、7割ちかくにもなる。
709万ヘクタールがどれくらいの面積かというと、およそ関東地方1都6県約324万ヘクタールと中部地方5県415万ヘクタールを合わせたほどの広さだ。 これが途方もない広さだということはおわかりだろう。
2007年だけではない。 毎年のように、台風が通過するたびに河口や海岸、とりわけどこまでいってもスギやヒノキの山々という異様な光景は、もちろん自然に生まれたわけではない。
古来、日本の風景を彩ってきたシイ、タブノキ、カシ類などの常緑広葉樹や、ブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹を、戦後になって役に立たないという理由で伐採し、かわりに商品価値が高いといわれたスギやヒノキを競って植えたのである。 国民病ともいわれる花粉症は、このときの植林からはじまったのだ。

大雨で流されるスギ2007年9月に台風9号が関東に上陸して日本列島を縦断したが、そのあとに大量の流木が東京湾に押し寄せた。 その前の7月にも、台風4号が通過したあと、高知県の各地で流木が押し寄せた。
8月の台風5号では、大分県の海岸が海面が見えないほど流木に覆われた映像がニュースで流れた。 ダム湖などが大量の流木で埋まってしまう。
これらの流木が川やダムをせき止めて被害を拡大させていることも少なくない。 スギやヒノキの森が治山治水に役立つどころか、いまや逆に人間の生活を危機に陥れている。
そのうえ、これらの流木を取り除くのに、膨大な時間と費用が費やされているのだ。 流木が流れてきた源流をたどっていくと、植林された斜面が台風によって崩れている場面がよく目撃される。
なかには人が登れないような急斜面もあって、よくぞこんなところに植えたものだと感心させられる。 とりわけ全国でも有数のスギ人工林がある高知では、そんな斜面が多い。
戦後、スギやヒノキを植えるたびに補助金が出るというので、山の斜面にロープを張り、片手でそのロープをつかみながら植えたという。 補助金ほしさに、本来ならスギなど植えられない斜面にまで植えたのだろう。
スギ林の斜面が崩壊した映像を見ると、倒れたスギの幹は太いにもかかわらず、広がった根が小さくて浅いのをよく見かける。 おそらく、根が発達しないから土をつかむことができず、大量の雨が降ると地上部の樹幹といっしょに押し流されてしまうのだろう。
そういったスギ林にはいると、林内は真っ暗で、丸太のような幹がうっすらと見える程度だ。 暗すぎてストロボをたかないと写真も撮れない。

日光が入らないから下草も生えないのだろう。 こうした山は地面が露出していて、大雨が降ると土壌ごと簡単に流される。
ところが、同じ雨量でも広葉樹はしっかりと斜面に根を広げている。 いったい、スギやヒノキと、シイ、カシ、ブナといった広葉樹にどんな違いがあるのだろう。
一般的に針葉樹は浅根性といって、地面の浅いところで網を広げたように根を張る。 だから、根が広がっている地表から数十センチより深いところで土砂が崩壊するとなすすべがない。
反対に広葉樹は、ゴボウのようにまっすぐ地下に向かって根を伸ばしていく深根ちなみにシイ、タブノキ、カシなどでは、地上部が3メートルなら、根は4メートル以上も深く入っているという。 とりわけブナ科のコナラは、太いゴボウ根を発達させることでよく知られ、地上部が爪楊枝ほどの太さでも手で引き抜けない。
直径別センチほどになると、もう油圧ショベルのような大型機械をつかっても抜けなくなるという。 これらの広葉樹は、地中深く根を張り、根の先がしっかりと岩盤をつかむから、スギのように流されることがないのだ。
ぼくは、2004年に新潟中越地震を取材したとき、崩れた家屋がカシの木などにもたれかかるようにして倒壊をまぬがれていた風景を何度も目撃した。 樹種まではわからなかったが、タブノキのような巨木に支えられながら、斜めに立っている家を見たときは、広葉樹に秘められた力強さに圧倒されたものだ。
山で生活する人(ぼくは「森の人」と呼んでいる)によれば、スギでも天然に育ったものは、根は網目状に広がるので心配はないそうだが、人工的に植林され、とりわけ間伐などの管理が行き届かないスギの根は、浅く小さくなってしまうらしい。 そういうスギは、大雨で土砂といっしょに流されてしまうのだという。
これは、人災ではないだろうか。 2004年に宮崎県で行われた第55回全国植樹祭で、天皇・皇后両陛下は、イチガシ、タブノキ、クヌギといった広葉樹を植えられた。
いつから広葉樹になったのだろう。 かつて昭和天皇が植えられたのは、スギ、ヒノキ、カラマツといった針葉樹だったはずだ。

天皇・皇后両陛下のご臨席の下で、はじめて植樹祭が行われたのは1950年(昭和25年)だった。 太平洋戦争の勃発により、軍が半ば強制的に木材の供出を求めた結果、乱伐に乱伐が重なり、戦争が終わると、あちこちに木が一本もない荒廃した山ができた。

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